●江戸明治和本●〈新板〉商民職人往来(宝暦板)勝間竜水 稀書往来物
【判型】大本1冊。縦211粍。
【作者】勝間竜水(定安・利右衛門・流水・新泉・松葉軒)作・書。
【年代等】宝暦6年頃初刊([江戸]鱗形屋三左衛門(山野三左衛門・鶴林堂・邸古堂)板)。宝暦頃刊([江戸]鱗形屋板)。
【備考】分類「往来物」。『〈新板〉商民職人往来』(宝暦板)は、『〈増補〉諸商買往来』『名産諸色往来』『新商売往来』『農人往来』などの異称を持ち、「陽春之慶賀如恒例、上下賑鋪規式、珍重々々…」で始まり「…万代不易之御仕置、天下泰平目出度々々。恐惶謹言」で終わる一通の新年状に、江戸府内の諸職・諸商売とその関連語を盛り込んだ往来物。冒頭に平和で繁栄した日本社会を謳歌する文言を掲げ、長崎を通じて流入する「異国之美物・奇物」等や儒仏その他の文化が江戸に集積することや、江戸の治安、町々の様子などにも触れ、続いて、呉服・絹布・布帛類、薬種、荷売り、その他諸商い、和紙、名酒・醸造品、穀類、材木・工芸品、日用品、魚介類、その他海産物、鳥獣類、野菜・果実・山菜・茸、小道具その他、草木などの商人用語、さらに、大工道具、家屋・家財、その他諸職関連語を列挙する。末尾で、当今の「富貴万福」が前代未聞であり、それが徳政のお陰にほかならないこと、また、日光・上野を始めとする神社仏閣の建立などに触れて締め括る。単に産業に関する語彙を羅列するだけでなく、諸国の地名や名産を多く掲出して地理学習にも役立つように編集した点が注目される。本書の外題替え本『〈増補〉諸商買往来』が江戸中期に同じ鱗形屋から刊行されたほか、本書を半紙本に改編した改題本『新商売往来』(高井蘭山校訂)も天保頃に出版された。以上はいずれも同文で、本文を5行・付訓で記す。このほか、本書の簡略版に天明2年刊『〈新撰〉商民職人往来』がある。なお、岡山大学附属図書館には『農人往来』と題した貞享2年写本が存する。表紙に「貞享二歳桃浪七日、農人往来、荻野猶右」と記し、序文に松葉軒流水が著し、柏屋与市(延宝~寛延頃の江戸書肆)が開板した旨を記載する。貞享二年刊が事実なら最古の産業科往来になるが未詳。また、底本には「鱗形屋開板」とあり、初版本の可能性もあるが、刊年が明らかな最古本は宝暦6年板である。
★改装・題簽欠・本文は状態概ね良好。稀書(全国に所蔵数カ所)。