縦約72ミリ✕横約65ミリ。厚さ約4ミリ。重さ約125g。
室町・桃山時代の鍔を長年収集してきた中、人生で唯一買った江戸鍔です。
常重が奈良派の名人ということは買った後で知りました。
銘を切る江戸鍔の競うような技や自己顕示には、現代芸術家に通じるものがあります。
対して黙々と無名の職人に徹する室町人や、枠にはまらぬ奔放な桃山人には自意識の侵食とは無縁の伸びやかな精神があり、それが江戸鍔を敬遠してきた理由でした。
しかしこの鍔には名人常重が、全く気負わずに気の向くまま自由に楽しんで作った気韻にあふれています。他の鍔では中国の故事にならった「高尚」な鍔がほとんどなので、気晴らしか手慰みの作品かもしれません。
それゆえ名人の技量が余すところなく発揮されています。
室町ファンとしては悔しい限りですが、雲間の月や舟人の見事な彫り込みの技は室町桃山職人の及ぶところではありません。しかし一片の誇示もこの画面にはありません。
名人がさりげなく作った名鐔をお楽しみ下さい。
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